鬱々しい卒業式
私の中の学校の校舎というもののイメージは、どうも卒業した学校の寄せ集めみたいにチグハグらしく、
夢の中に出てくる学校の校舎も外観と中身があっていなかったりと何かとおかしな点が多い
今日は高校の卒業式、の(おそらく最後のリハーサル)練習だった。
周囲にいるのは確かに過去クラスメートだったはず、の生徒達であった。
しかし小・中学校、高校、大学と接点はバラバラの、変なクラスメート達だった。
体育館のパイプ椅子に私はぶすくれて座っていた。
卒業生のはずなのに、何故か在校生よりもステージから離れた位置の席である。
まあ大体の卒業式のテンプレみたいな進み方をした。
証書と花を一輪受け取り、歌を歌い、写真を撮る。
何故か練習のはずなのに、来賓席のような場所に着飾った親達がいる。
わたしの母親も、赤い服を着てそこにいた。
夢の中故の矛盾が多い。
お昼休憩に入ります、とアナウンスが流れた。
もうほとんど卒業式なのだろう、卒業生達はそのまま体育館でだったり、教室に戻ったりして、豪華な昼飯を食べている。
親達の差し入れだったり、自分たちでカンパを募ったりしたようだ。
わたしのクラスメート達は体育館にいたが、わたしは1人で教室に弁当を取りに行った。
1人で教室で食べようかとも思ったが、教室の中も卒業式近くの浮ついた雰囲気でいっぱいで、外に出た。
他のクラスの子達が、廊下で騒いでいる。
ゲームをしてたり、写真を撮ったり、笑顔でわたしにも声をかけてくる。
わたしも同じように適当に返事を返して廊下を進む。
なんとなく虚しくて、目が潤む。
階段を降りていくと、在校生達が階段を上ってくるのとかち合った。
口々におめでとうございます、と言ってくる。
とうとう決壊した。その場で泣き喚いた。
何がめでたいものかと。わたしには何もないのに。
また死ねなかった。卒業式までに死にたかったのに、また死ねなかった。
現実では経験がないくらい、大声で、大口を開けて、泣き喚いた。
そのまま階段を降りて、体育館に向かう。
涙は全く止まらなかった。
体育館は相変わらず浮ついた雰囲気だった。
いっそ母親に泣き付こうかと思ったが、もう母親はいなかった。
大きくしゃくりあげながら体育館の自分の席に戻った。
誰もわたしのことなんて気にしなかった。
卒業式に感極まって泣いているのだろうと、いっそ微笑ましくぬるい目で見られた。
大声で、違うのだと、そんな希望に満ちた理由で泣いているのではないと、必死で訴えたけれど、誰も聴いてはくれない。
死にたい、死にたいと訴えながら泣き続けた。
目が覚めた。最悪の目覚めだ。
バイトだ、遅刻だ、急いで着替えて行かなくては。
気分が悪いし、遅刻確定だし行きたくないが、バイトだから仕方ない。
とりあえず行かなくては、と急いで家を出る直前で気付いた。
今日は休みだ。だからタイマーもかけずに昼寝をしたんだ。
ああなんだ、よかった。いや、よくないけれど。
でもやっぱり気分が良くないな。
目が覚めた。全部夢だった。
わたしは毛布の中から全く動いていない。
起きてすぐは、何が何だかわからなかった。
ここがどこなのか、何をしなければならないのか、今はいつなのか、私は何なのか。
しばらくじっと毛布の中で息を潜めていて、そこでやっと気付いた。
全部夢だったんだ。
気分が悪いことには変わりがない。もう何もしたくない。
もう今日はここから動くのをやめよう。
こんなに体が重たいんだから。
ああ、なんて最悪な夢を見たんだろう。
でも少し、あの大声で泣きわめく私が羨ましかった。